第19章 売り物に見えないのか?

真扫兴。

続ける気力を失った稲垣栄作は、バスタオルを手に取りシャワーを浴びに行った。高橋遥を一瞥し、ただただ苛立ちを感じた。

浴室で、シャワーの下で彼は自分の手を見つめ、一瞬ぼんやりとしていた。

脳裏に高橋遥の反抗的な言葉が響く。

「もうあなたを愛していない、お願いだから私を解放して」

彼は認めざるを得なかった。確かに心が一瞬揺れたのだ。それは怒りか?

だが、なぜ高橋遥に対して怒りを感じるのか。彼女の考えなど気にしていないはずなのに。

それでも、彼女が小さく泣いている姿を見ると、なぜか心が軟らかくなるような気がした。

いや、これは心の軟化ではない。彼はそれを認めるつもりはなか...

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